あらすじ

西暦2129年クリスマスイブ。
場所は地下巨大施設:下月バイオ総合研究開発所。
街外れの小高い丘に在る誉総合病院と一部連結したその施設は、街一つ分の広さと高度なセキュリティーを持つ。
そのBRH研究棟最下層部でトップの護衛をする青年と、
記憶を失った血塗れの少年が再会する所から物語は動き出す。
それは法で禁じられたHumanoid達。

西暦2134年
乞い、希う少年は夢を見る。
それ自身の記憶か、大樹に刻まれた想いか。

そして直面する岐路。

恐怖? 衝動? 決意? 喪失? 協力? 単独? 離別? 脱出? 脱走?


現状に身を委ねるもまた選択。

動き出したら後戻りは出来ない。
知れば識る程失敗は許されない。

イきるもシぬも、アナタ次第。

『人間が大好き。だから、失敗作でも犯罪者の僕でも今出来る事、やりたいんだ』

世界観

西暦2129年
世界は相変わらずだった。
核兵器、戦争、テロ、拗れる条約・・・・・・
一見した人と人との関係すらも。
そして、環境破壊も緩やかながらも進行は止められない。

けれど、一度世界の破滅を目前に見た後の世界。
破滅へのカウントダウンが少しだけ延びた世界。

それは2000年を過ぎた頃から確実に近付いていた。
間違った政治に、悪化する経済。
余裕の無くなる人々から『絆」と『思い遣り』の気持ちは薄れ、犯罪は頻繁に凶悪に。
人々の中に広がるストレスは尋常な物ではなくなる。
何かの『為』にはそれの『所為』へと替わり、内部での『悪』が蔓延し、拗れる各国。
そんな中で国同士の関係が円滑に進む筈も無く―――
後退する政策が加味すれば、底を知らない奈落の如く悪循環に落ちて行き、
急速に病みに行く大地は人々に牙を向けた。

2047年、
資源と土地を巡る第三次世界大戦が目前に迫ったある秋の日。

それまでに人口は繁栄期の半分を切っていたのだが、
天変地異により更に激減し、国は幾つも水没、壊滅へと追いやられた。
それを目の当たりにして、
各国の代表は漸く武器を捨て同じテーブルを囲み、可及的速やかに効力の出る政策が重ね行われる事と成る。

それから6年後。
水面下で並行して行われていた政策の一環が一般に披露された。

『Bio-Reinforcement-Human』生命強化人類

脳に小さな機器を直結させ、全身をナノマシンが巡る肉体を持つ人間。
定期的なメンテナンスこそ必要ではあるが、治癒力に長け、生命力が強く、成長する事も老いる事もない身体。
頭脳を酷く損傷しない限り半永久的に再稼動が可能な生命体。
通称『Humanoid』
その対象と成ったのは、病人でも軍人や偉人でも無く、犯罪者の死体。
生前の凶悪な記憶を抹消し、行動の一部を制限する事で、
生きる人々のフラストレーションの捌け口と成るべく再び命を与えられる。

治安を回復し維持する為、法を飛躍的に強化するにあたり、
もはやそれだけでは抑えが利か無い程に荒み、
歪んだ大多数の人々を鎮める為には真逆のベクトルを与えるべきだと世界は判断したのだ。
そしてそれは、犯罪への抑止力にも繋がった。
実質、犯罪者への極刑であり、ともすれば自身の将来を映す鏡でもあるのだから。

仮初の平和の幕開けだった。

物語の舞台であるここから更に81年後の2134年、人々が危機感を薄れさせるには充分な歳月を経た未来。
一から身体を生成する必要の無いHumanoidは重宝され、
用途は多岐に増える事と成る。

それだけではない。
クローン・アンドロイド・サイボーグ・ロボット・AI・・・
それらを含めた科学技術の発展は目まぐるしく、流れに乗るか反るかで大きく二分された人間の世界。
そして、再び傷を広げつつある地球。

余りにも脆弱に保たれた均衡は再び崩れ始める。